環境省平成16年度概算要求の注目点について [社]日本環境衛生施設工業会(事務局 私見)
平成16年8月31日
(社)日本環境衛生施設工業会
事 務 局

 環境省の平成17年度概算要求の概要が去る8月31日に明らかになりました。
 廃棄物関連の平成17年度概算要求については、大臣官房廃棄物・リサイクル対策部が作成した「平成17年度廃棄物・リサイクル対策関係予算概算要求の概要―持続可能な循環型社会の構築の推進―」のとおりです。なお、例年、作成される同部廃棄物対策課のPR資料はまだ発表されておりませんが、発表され次第、別途、掲載する予定です。

 そのうち注目点として、
  I 廃棄物処理施設整備事業の補助率の引き上げ(循環型社会の形成に向けて率先した取り組みを行う市町村については更なる補助率アップ)
と補助対象範囲の拡充
  II 汚水処理普及対策助成金制度(仮称)
  III 廃棄物処理施設における温暖化対策事業(石油特別会計)
  IV 廃棄物処理等科学研究に対する補助
及び
  V その他
について、私見ですが解説を試みたいと思います。
 なお、本文は環境省ご当局のチェックは受けておりませんので、内容についての一切の責任は日本環境衛生施設工業会(事務局)にあります。
  I 廃棄物処理施設整備事業の補助率の引き上げ(循環型社会の形成に向けて率先した取り組みを行う市町村については更なる補助率アップ)
と補助対象範囲の拡充
 現在の廃棄物処理施設整備費補助については、ダイオキシン削減のための特別の施策が15年度に一応完了したことを踏まえ、16年度以降は、これまでの方向を転換し、地球温暖化対策や循環型社会構築に向けた施設整備の政策的誘導のための補助と位置づけ、これらの施設の整備促進を図っているところであり、17年度予算概算要求の中でもその考え方は踏襲されております。
 われわれ工業会メンバーが特に関心をもつ廃棄物処理施設整備費補助金(公共)については、「概算要求の概要」の2ページで、
2 循環型社会の実現に向けた社会資本整備等
  (1)廃棄物処理・リサイクル施設の整備、エコタウン事業の推進等
  ○廃棄物処理施設整備費補助金(公共)
(単位:百万円)
     
134,008 → 155,985
 

 

廃棄物行政における国の責務を踏まえつつ、循環型社会に相応しい廃棄物
  処理システムを構築するため、補助率の引き上げ及び補助要件を改正し、廃棄物処理施設の効率的・効果的整備を促進する。
  補助率の引き上げ
    ごみ処理関係施設整備事業の補助率を1/4から1/3に引き上げる。ごみの有料化や分別の徹底などにより、廃棄物の発生抑制や再生利用を推進し、循環型社会の形成に向けて率先した取組を行う市町村については、補助率1/2とする。
また、浄化槽整備事業(コミュニテイ・プラントを含む。)の補助率を1/3から1/2に引き上げる。
  補助対象範囲の拡充
    管理施設、用地費等の補助対象としての復活等
とされています。

 現在、御承知のとおり、三位一体の行財政改革が進展中であり、8月24日の経済財政諮問会議でも地方6団体から税源移譲を前提とした補助金縮減のリストが出されたところですが、環境省の予算では、循環型社会の実現や脱温暖化といった国民全体が等しく求める政策について、国の立場で重点的に支援する観点から、補助率の引き上げが要求されています。
 まず、ごみ処理施設関連の補助率は現在、1/4となっていますが、これを汚泥再生処理センターなどと同等の補助率である1/3にアップする要求をしています。
 また、環境立国の観点から、有料化や分別の徹底を図るなどの循環型社会形成に向けて率先した取り組みを行う市町村については補助率1/2を要求しています。
 これは、従来、公害防止計画地域では補助率を1/2にかさ上げしている考え方に類似の立場で国策の方向に沿った事業を積極的に支援するものだと考えます。
 また、浄化槽整備事業についても一層の整備促進を展開するため、現行制度の1/3から1/2に補助率のアップを要求しています。
 さらに、補助対象範囲の拡充についても、従来から、管理施設や用地費について補助対象とされていましたが、近年、ダイオキシン対策のため補助金が不足した時代にやむをえず補助対象から外された経緯があります。ダイオキシン対策が一応完了した今日、市町村の状況を考慮して補助対象に復活するものであり、その実現を大いに期待するものです。
 産業廃棄物については、現在の産業廃棄物処理施設モデル的整備事業を産業廃棄物処理施設整備事業として名称変更し、モデル補助から一般補助にして要求しています。
 また、最終処分場については残余年数5年以下の場合に限り、2箇所目以上も補助対象とするという要求をしています。
 このほか、施設整備の社会的コスト縮減の観点から、廃止される一般廃棄物処理施設の再生事業(施設の一部更新事業)に対して国庫補助を行うという要求を行っています。

 従来から補助率のアップや補助対象の拡充は、新規補助制度の創設と同様にあるいはそれ以上に困難なものであり、関係者の強い要望にもかかわらず実現されておりませんが、廃棄物処理施設の整備は、国民各層の要請である循環型社会構築を支える基盤事業であり平成17年度予算の概算要求の目玉とされた環境省の勇断に大いなる敬意を表するものであります。

 しかし三位一体改革の行方とも関連する要求でありますので、実現までには幾多の曲折が予想され、また、各方面への強力な働きかけや支援が必要になるかと思います。当工業会としてもできるだけの努力を尽くしてまいりたいと考えているところです。

  II 汚水処理普及対策助成金制度(仮称)
   
0百万円 → 5,000百万円
 本予算は、浄化槽推進室とりまとめの新規要求事項です。
「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(骨太方針2004)」や「今後の地域再生の推進にあたっての方向と戦略」等を踏まえ、地域の自主性や裁量性をより発揮出来るような補助金制度改革の一環で要求するものです。
 国費として国土交通省200億円、農水省70億円、環境省50億円を要望していますが、公共下水道、農業集落排水、浄化槽の各事業間で流用可能な交付金的な仕組みを想定しています。
 浄化槽の整備促進については、平成17年度は公共事業関係費の中で、国庫補助金385億円と16年度予算に対して128億円増、前年度比150%という大きな予算を要求しています。
 浄化槽は、環境保全の重点事業としてこれまで、推進されてきていますが、更なる普及のために、全国の各自治体の自由な取り組みを支援するために新しく交付金制度を導入するものです。
  III 廃棄物処理施設における温暖化対策事業(石油特別会計)
   
1,000百万円 → 2,400百万円
 本予算は、産業廃棄物課とりまとめ要求事項です。
 地球温暖化対策事業については、環境省では、17年度の概算要求で、「脱温暖化社会」というキーワードで各種の政策を推進することになっていますが、その一環で、産業廃棄物処理業者が行う高効率な廃棄物発電施設、廃棄物余熱利用施設等の整備事業であって、発電効率や余熱利用量等一定の要件を満たすものについて整備促進の観点から補助を行うものです。本予算で廃棄物分野の温暖化対策の推進を図るものですが、17年度では、発電のみならず余熱利用についても補助対象となる内容になっています。
  IV 廃棄物処理等科学研究に対する補助
   
1,150百万円 → 1,780百万円
 廃棄物の適正処理やリサイクル、循環型社会システムの構築などについて研究者、企業等が行う研究や技術開発を推進する予算です。
 17年度は16年度に比して大きく増額要求されています。
 今後も、新しい技術システムの提案や導入が不可欠になることを考慮しての要求と思われます。
  V その他
 アジア資源循環推進構想事業(14百万円→200百万円)や産業廃棄物処理業優良化推進事業(51百万円→117百万円)については、前年度より大幅な増額要求がなされています。こうした要求は、アジア地域の資源循環の適正化や産廃処理の構造改革を推進するもので、公共事業費補助金が充当される廃棄物処理施設やリサイクル施設の整備に関連するものとなりますので、大いに注目が必要と思われます。

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